SNS感覚で降霊体験——あなたなら手を握りますか?
2023年12月に日本でも上映された「TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー」が、いよいよ2025年6月22日にPrime Videoで配信が開始されました!
本作は、『ヘレディタリー/継承』(2018)や『ミッドサマー』(2019)を超えて、A24ホラー史上最高の興行収入を稼ぎ出した注目作で、すでに続編製作も決定しています。
A24が贈る最新ホラー映画『トーク・トゥ・ミー』は、現代の若者たちがSNSノリで霊とつながるという、ありそうでなかった設定から恐怖を突きつける異色作。
A24らしいスタイリッシュな映像美と独創的なアイデア、そして何より観る者に“参加させる”ような臨場感。
ホラー映画の新しい扉を開けてしまったかもしれない、この話題作の魅力を、監督の背景や制作秘話を交えながら、ネタバレ無しでレビューしていきます。
『トーク・トゥ・ミー』とは?
作品情報
- 作品名
-
TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー
- 公開年
-
2023年
- 監督
-
ダニー・フィリッポウ
マイケル・フィリッポウ - 上映時間
-
95分
あらすじ
母を亡くした高校生のミアは、気晴らしに仲間とSNSで話題の「90秒憑依チャレンジ」に参加してみる。ミアたちはそのスリルと強烈な快感にのめり込み、チャレンジを繰り返していくが、仲間の1人にミアの母の霊が憑依し―。
監督はYouTuber出身?A24と異色のタッグ
本作を手がけたのは、YouTube出身の双子の監督、ダニー&マイケル・フィリッポウ。
元々は「RackaRacka」というアカウントで、超過激なアクションコメディ動画を発信していた彼らは、登録者数700万人超を誇る人気YouTuberでもありました。
そんな彼らが長編映画に挑んだ結果生まれたのが、低予算ながらも口コミで異例の大ヒットを記録した本作。
実体験から着想を得たという“降霊の手”のアイデアや、視聴者の「共感できないのに、目が離せない」心理を巧みに利用する演出が光ります。
『ミッドサマー』や『ヘレディタリー』などで知られるアート系ホラースタジオA24と、YouTubeで感性を磨いた若手監督の組み合わせは、『トーク・トゥ・ミー』の“異様な魅力”を生み出す化学反応とも言えそうです。
ちなみに、監督たちは映画の降霊設定のヒントを実際に体験した怪談的エピソードから得たとも語っており、作り手自身が「リアルな恐怖」を感じながら制作したことが、作品の生々しさや説得力に繋がっているのかもしれません。
ネタバレ無しでレビュー
映画の気になるファクター(要素)6つ
☆=0 ★=1の評価です
ファクター(要素) | 評価 | コメント |
---|---|---|
動物の安否 | ☆☆☆☆☆ | 動物はほぼ登場しません。 |
性描写の有無 | ☆☆☆☆☆ | ありません。 |
流血の有無 | ★★☆☆☆ | そこそこ流れます。 |
グロテスクなシーン | ★★★★☆ | ゴア表現がやや強いです。 |
視聴対象層(子供★・大人向け☆) | ☆☆☆☆☆ | PG12です。 子供の視聴はオススメしません。 |
予習の必要性(過去作・事前知識) | ☆☆☆☆☆ | 予習の必要性はありません。 |

ゴア表現は結構強烈に感じました。「いたたた」となるのに加え、
映画序盤から95分ずっと不気味でゾワゾワしっぱなしでした。
ホラーが苦手な人にはオススメできません。
インタビューから見える制作の裏側
映画が話題になった当初、本作の着想に関しても注目が集まりました。
「ドラッグで倒れた少年を前にして周りの子どもたちは見ているだけ、という状況を目の当たりにして、そこにホラー性を感じ取った」
これが他の作品にはない現代的な演出のきっかけになったのだとか。
また、物語の中核を担うのは「共感しにくいキャラ」。監督は、「視聴者が完全に共感してしまうと、恐怖を客観視できなくなる」ため、敢えて温度差を残すキャラ設計にしたとインタビューで明かしています。
レビューにもよくあったのですが「主人公が理解できない」「主人公が自己中心的」と言われるのですが、これは意図的だったのですね。割とホラーあるあるな気がします。
さらに編集段階では、「クローネンバーグ的過剰ゴア」は15秒に圧縮し、“意味ある痛み”にとどめる演出バランスを意識したとのことです 。
SNSと降霊ゲームの組み合わせが生むリアルな怖さ
本作は、TikTokやInstagramでバズるような“降霊チャレンジ映像”がきっかけで始まります。実際の若者による“試してみるノリ”を再現し、友だちがスマホ越しに盛り上がる中で、恐怖がじわじわとリアルになる構成です 。
本作が他のホラー作品と一線を画すのは、この現代にありそうなリアルな状況だと思います。
筆者は30代なので、自身が当事者になることはないですが、今時の若者の「バズるためになんでもする」という、理解できない馬鹿馬鹿しい光景は、“実際にある”ことだと分かります。そこが尚の事リアルすぎて怖かったです。
海外誌のWIREDでも「SNS世代の少年少女が、コンテンツ目当てに降霊をやるシーンがリアルすぎる」と指摘し、「ネットで流行る無邪気さ × 降霊の危険性」の交差が本作の恐怖の源だと評価しています。
WIRED – The Horror of Talk to Me Is the Horror of Being Extremely Online
自傷描写と精神的トラウマがリアルすぎる
本作にはゴア表現として自傷行為の描写があります。苦手な人、慣れていない人にはショッキングなシーンです。
上記にもありますが、「過剰ゴア」は15秒に圧縮し、“意味ある痛み”にとどめる演出バランスを意識したとインタビューで語られています。
いや、本当に圧縮してくれたな!と言いたくなるような、強烈な演出でした。これでも抑えてるってマジですか?
しかし、この表現が本作のストーリーには欠かせないきっかけでもあり、物語の重要な要素です。そういった見せ方も上手いなぁと思いました。
ちなみに、VFXに頼らず、実際の演技や物理的な効果で撮影された場面が多いそうですよ。
「主人公が自己中的」などと多くのレビューで評されていますが、喪失や孤独、罪悪感といった“心の傷”も描くことによって、ホラーを通して観客に「他人の痛み」と向き合わせることを意図していたそうです。
総評:これは“観る降霊体験”
まず言いたいのは、ホラーとしてはしっかり怖い作品だと思います。
ゴア表現なども含めて、映画は終始不気味でゾクゾクしますし、なかなかホッと安心できる場面が少ないので、ホラーに弱い方にはオススメしづらい作品だと思います。
個人的には、登場人物のほとんどがティーンエイジャーの若者なので、何をするか分からないという意味での怖さもありましたw
しかし、YouTuber出身の監督が描いた本作は、これまでの作品にはない現代的なリアリティーのあるホラーとして非常に面白い作品でした。
だって、絶対若者でやるやついますよw
「90秒憑依チャレンジ」と題して、1人を複数人がスマホを向けて囲み、泡を吹いて倒れたってお構いなしで撮影し続ける。そんな光景が容易に想像がついてしまう、もはや現実も十分ホラーですね。
そういう意味では、題材の時点で発想が面白い作品でした。
A24タッグを組んだこともあって、映像面でも非常に安心感があります。
若者たちが「90秒憑依チャレンジ」をやるシーンは観客もその場にいるような気持ちにさせてくれます。
そして、終わり方も非常に秀逸でした。私はめっちゃ好きです。こういう終わり方。
ホラー作品がお好きで、本作の現代的な設定に惹かれた人には是非オススメしたい作品です。